小料理屋さつきの天井裏

「小料理屋さつき」では扱わない小ネタとかmixiからの転載等。

終活万博(あくまで個人的妄想)

 誰しも死を逃れることはできない。
 かつては「姥捨て山」という考えがあったが、子供世帯と縁が薄くなった現在、誰が死という山に自分を捨ててくれるのか。ならば自分で死という山へ登って行くしかないのではないだろうか。
 そして、死の山にはどのようなものが有るのか、最先端技術は終活においてどんな益をもたらしてくれるのか。
 その事に焦点を置いたのが「終活万博」であった。

 介護ロボットは各国のロボット技術を見せる意味でも力が入った展示となった。人間味をあえて外しているものから、人間に限りなく近い姿形を持ったものまで各国のパビリオンで来館者の注目を集めた。人間の介護スタッフを支援する……例えば被介護者を持ち上げたり器具を運搬をしたり、被介護者の徘徊を防ぐ為の見守り付き添いをする支援ロボットも話題になった。
 寝たきりの介護から、散歩や買い物や家事を支援するものまで様々な種類のものがあった。1970年の万博に出品された「人間洗濯機」がスタッフに重労働を強いること無く被支援者を快適に入浴させるための器具として生まれ変わって出品され、人間洗濯機を知っている人達は興味深く見ていたという。

 「老人の性」についても取り上げられた。身体能力が低下しても性欲はあるという事、福祉スタッフが性被害に遭う問題。それらを解決するため、様々な機能に柔軟性を持たせたというセックスロボットが展示された。会期中そのロボットについては賛否両論が起きた。出品国はむしろ話題になることで「身体弱者と性」の問題に人々が向き合うことを期待しているというコメントを出した。

 食事についても各種出品された。最後まで美味しい生活をという事で、施設が導入維持しやすく、なおかつ被介護者の食事の喜びを満たするという難題に取り組んだ結果が各国パビリオン付属のレストランなどで提供された。胃ろうになりたくないという人達からは「家庭の味が再現できたら」「同居や面会に来た家族も一緒に楽しめるものを」という声があったという。変わった意見として「子供の頃の給食を再現して欲しい」というのもあった。子供の頃体験したことをもう一度体験することで自らの活性化を期待したいのだろう。

 一軒家から集合住宅までシルバー向け施設のモデルハウスはかなりの待ち時間ができるほどの人気であった。24時間側にいてくれる支援ロボットや定められた時間に様子を見に来る人間のスタッフに支えられながら生活可能な、比較的健康な人達に向けての物件だ。
 廃業したゴルフ場を再開発し、設備の整った病院とシルバー向け物件、バリアフリーの多用な商業や娯楽、スポーツ施設(ゴルフ場の一部も再利用される)を一つにした計画はスポーツに関心のある人達の興味を引いた。
 
 同じ趣味を持つ人達が集まる独身向けセミ・シルバー施設もアニメファンなどの「オタク」達の興味を引いた。集団生活が苦手な人達向けに、本格的なホームに入居する前に集団生活に少しでも慣れることが出来ればという声が集まって、実験的に小型施設が作られ、そこでどのような日々を送っていくのかなどのパネル展示、入居者の声、入居者が使っている部屋の複製や施設全体の模型が展示された。ここでも人間のスタッフ以外にロボット達の支援、スマート家電などが活躍している。また、「自分が亡くなった後、自分のコレクションをどうするか」や「自宅から入居にあたりコレクションを見直したい」などの要望に、コレクションを扱う業者やトランクルーム業者、引っ越し業者や部屋の片付けを手伝う業者など様々な業者がアドバイスに乗ってくれるという点も興味を引いた。あの世まで持って行けるなら持っていきたいがそうもいかない……でもどうすれば。と独りで考え途方にくれている人が入居前にじっくり話し合う事ができるという。そのサービスだけ利用する人も居たそうだ。だが、入居にかかる費用は安くないことから、ライト層では利用できないねという声もあり、また、趣味が似ているからこそこだわりがあり、趣味が原因で他の入居者ともめそうで怖いという声もあった。そのため、このムーブメントが広まるかは難しいという声が多い。

 セミ・シルバー施設としては他に「職人の町計画」というのもあった。技術を伝えたい人と技術を学びたい人をマッチングしたいという、個人から小企業向けの施設だ。若い人に来て欲しいが、徒弟制度に近い勤務かつ生活するには厳しい賃金しか出すことが出来ずなかなか技術伝承がおこなわれないことが問題になっている。国や民間企業の支援を受けつつ、できる限り「師匠」と「弟子」が一カ所に集まることで生活にかかる費用の低減は図れないだろうか、異業種交流はどうか、などの点が示されている。夢物語すぎると呆れる人達もいたが、資金など支援を受けて生活できるのなら一考したいという声もあった。こればかりは支援団体が乗り出すことを待つ他ない。

 その他にも、グループで都市部から各地へグループで移住する様々なプランも展示された。例えば、夫婦だけで慣れぬ土地に移住したものの、その土地になじめず、現地の人も受け入れてくれないという問題がある。ならば、地方に「都市から地方へ組」向けの新たな移住地を開発し、まずは彼らのみのゆるやかな共同体を作るのはどうかという地方自治体からの提案である。直接、既に構築されている地方コミュニティにダイブするのではなく、ワンクッション置くという事だ。これについては「都市部での生活の延長にしかならないのではないか」「オシャレな地方暮らしではなく、移住した土地にしっかりと向き合いたい」という声が上がった。

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 大阪万博開催決定のニュースを聞いた数日後、ふと浮かんだ単語が「終活万博」でした。健康や医療がテーマだからだったのでしょう。
 しかし「死」や「死にゆく人」についてハッキリとした展示がどこまでできるのだろうか? と考え、まずは介護や入居施設のアイデアからパラパラと書き出してみました。
 ちなみに、火葬~散骨までを凄くドライに考えた文章は既に書いています。が、いきなり死んじゃった後の事を書いても「終活」っぽくないので、まずはササッと読み流せる分量で区切ってアップしようと思いました。
 
 上記で書いたアイデアは既に現実となっているものもあるかもしれません。福祉や医療ニュースはTwitterのTLやネットのニュースなどで目に付いたものはできるだけ読むようにしていますが、それでも限界があります。既出の場合申し訳ありません。
 また、費用などの面で今の時点では実現不可能なものも出しています。これは、自分が筑波科学博のパビリオンで体験した事全てが科学博終了後に実現した訳ではないという事を前提として書いています。
 けど……かなりのものが実現しましたよね。凄いと思います。
 
 ロボット技術が介護に大きく貢献して欲しいというのは自分の我が儘な願いです。現在自分は一人暮らし。生活支援スタッフに来てもらうこともありますが、事前に計画を出さないといけないこともあり、自分の精神病の気まぐれさもあって不便さを感じています。そこで、24時間側で静かに見守ってくれたり、外出時に側に居てくれるロボットがいてくれたらなぁとSFファン的に思っています。

 Twitterに書きましたが、今年の半ばに浴室で足許にこぼれたボディーソープで滑ってあやうく転倒しそうになりました。ユニットバスによくある洗面台と浴槽のへりを掴んで難を逃れましたが……賃貸なので手すりをつけることもかなわず、その後シャワーは慎重に入っています。
 50歳ですがヒキコモリ生活もあって体力は低下しています。被介護や孤独死は今の自分にとって他人事ではありません。でも、24時間好きなときに福祉スタッフに来てもらえる訳でもなく、ましてや風呂で滑りそうな時に助けてと言っても独居の風呂に響くだけ。
 その為、ヘルパーロボ開発は自分にとって切実な願いなのです。

 もう少しネタを書きためたらアップするかも……または、火葬~散骨の話だけでも次回アップしたいと思います。